
イベント時のバナーを再利用。世界に一つだけのバッグが誕生。
#07『mt NEXT 100』
これから先の100年に向けた
廃材を活かし、新たな価値を生むプロジェクト
ルボア
林 周二さん
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これまで国内外で開催してきたmt展では、会場を彩るために布製のバナー(垂れ幕)を使用してきました。カモ井加工紙ではこのバナーを再利用し、バッグや小物として仕立てる試みを始めています。
アップサイクルの1つとして取り組んでいるバナーバッグ制作。完成したバッグは「mt factory tour」で初めてお披露目しました。その後も異なるバナーを使って少しずつ制作を続け、東京・蔵前のmt lab.でもバナーバッグ展を開催。この取り組みに協力してくださっているのがルボアの皆さんです。CEOの林さんに、まずは会社についてお聞きしました。
「ルボアは1961年に香川県東部地区の地場産業である革手袋の製造メーカーとしてスタートしました。時代の流れとともに手袋製造に必要な技術を応用し、財布やカードケースなどの革製品を作るようになりました。現在はその繊細な手仕事を評価いただき、OEM・ODMという形で有名ブランドの革製品を製造したり、自社ブランドを全国展開したりしています」
バナーを再利用するという制作依頼を受けたとき、「すばらしい案件だと思いました」と林さんは振り返ります。
「これまで展示会やフェアなどの会場で、アイキャッチとして重要な役割を担っているバナーを目にしてきましたが、恥ずかしながら会期後のバナーの行き先には無関心でした。ですが、バナーは雨風にさらされることを前提に作られており、丈夫で再利用にふさわしい素材だということを教えていただいて、ハッとしたと同時にすばらしい取り組みだと感じました。
お引き受けして実際に制作に取りかかると、できそうでできないの連続で、一筋縄ではいかなかったですね。素材が丈夫なのは良いことですが、言い換えるとそれはとても硬いということです。縫うことはできても折りたいポイントできれいに折れてくれず、目指している形になかなかたどり着けませんでした。またバナーとしての役割を果たしているため、多少なりともシワや汚れがあります。美しく仕上げるためにバッグのどのパーツにどの部分の生地を持ってくるかということも苦労しました」
さまざまな試行錯誤を経て商品は完成。バナーをトートバッグ、ウエットティッシュポーチ、モバイルポーチ、アウトドアクッションなど続々とすてきなアイテムに生まれ変わらせてくださいました。
「普段、私どもが主に扱っている素材は革です。革製品は人類最古のアップサイクル品と言われており、食肉文化の副産物として革製品が存在しています。同様に、役目を終えてしまったバナーも捨てておしまいではなく、用途や形を変えてアップサイクルすることで唯一無二の新しい価値を創造できます。この点で共通点を感じましたね」
バナーからバッグ用に生地を切り出す際、その箇所によって色合いやデザインは異なり、一つとして同じものはありません。そうして完成したオリジナルの製品は、手に取ってくださったお客さまからも好評をいただいています。今後も、皆さんの暮らしを彩る手助けになるような形でアップサイクルへの取り組みを続けていきます。

イベントで使用していたバナー。しっかりとした素材で、水にも強いことが特長です。

アウトドアクッション。生地を切り取る場所によってまったく違うデザインが生まれます。